親知らずは抜かないといけないのか？
愛媛県松山市の歯医者、石岡歯科医院の院長 石岡 亮です。
今回は、「親知らずは抜かないといけないのか？」についてお話をしていきます。
【目次】
1.親知らずとはどんな歯？
2.親知らずを抜かなくてもよい場合
3.抜いたほうがよい親知らずとは
4.親知らずが及ぼす周囲の歯への影響
5.咬合圧と前歯の関係：奥歯の役割
- 抜歯のタイミングと術後の注意点
- まとめ
1.親知らずとはどんな歯？
親知らずは、正式には「第三大臼歯」と呼ばれる一番奥の歯です。
10代後半から20代にかけて生えてくることが多く、現代人では顎が小さいため、まっすぐに生えるスペースが足りないことがよくあります。
そのため、横向きや斜めに生えて「埋伏智歯」となったり、半分だけ歯ぐきから出てくる「半埋伏智歯」になるケースも少なくありません。
2.親知らずを抜かなくてもよい場合
ただ、すべての親知らずを「抜かないといけない」わけではありません。
以下のような条件を満たしている場合は、抜かずに経過観察することも可能です。
・まっすぐ生えており、上下の噛み合わせが合っている
・歯みがきが十分に行える位置にある
・隣の歯や歯ぐきに悪影響を及ぼしていない
・将来的にブリッジやインプラントの支え歯として使える可能性がある
つまり、「正常に機能している親知らず」は、抜かずに大切に使うという選択もあります。
3.抜いたほうがよい親知らずとは
一方で、次のような場合は抜歯をおすすめします。
・横向きに生えていて、隣の歯を押している
・親知らずの周囲に腫れや痛みが繰り返し起こる
・清掃が難しく、むし歯や歯周病を起こしている
・隣の歯の根や骨を溶かしている
・顎関節症や噛み合わせのずれの原因になっている
特に横向きに埋まっている親知らずは、手前の第二大臼歯（奥から2番目の歯）を傷つけ、結果的に健康な歯を失うことにつながるため注意が必要です。
4.親知らずが及ぼす周囲の歯への影響
親知らずを放置すると、想像以上に多くのトラブルが起こります。
・隣在歯のむし歯や歯周炎
横向きに生えた親知らずは、隣の歯との間にプラークがたまりやすく、歯ブラシが届きにくいため、むし歯や歯周病の温床になります。
・噛み合わせのズレ
一部の親知らずが中途半端に噛み合うと、咬合圧（噛む力）のバランスが崩れ、顎関節や前歯に負担がかかります。
・前歯が動く、すき間ができる
奥で押されることで歯列全体が前方に押し出され、歯並びが乱れることもあります。
このように「親知らずを残すこと」が、結果的に他の歯を失う原因になることもあるのです。
5.咬合圧と前歯の関係：奥歯の役割
奥歯（大臼歯）は本来、強い咬合圧を受け止める役割を持っています。
しかし、親知らずが悪い位置にあると、奥歯全体の力のバランスが崩れ、結果として前歯に余計な力が集中します。
この状態が続くと、
・前歯がすり減る
・前歯が傾く
・歯ぐきが下がる
・噛み合わせが不安定になる
といった問題が起こります。
つまり、親知らずは「抜くかどうか」だけでなく、「噛み合わせ全体の安定」にも深く関係しているのです。
６.抜歯のタイミングと術後の注意点
親知らずの抜歯は、「症状が出てから」では遅い場合があります。
炎症が強いと麻酔が効きにくく、抜歯も難航します。
理想的なのは、炎症がない状態でレントゲン・CTを撮影し、将来リスクが高いと判断された時点で計画的に抜くことです。
術後は、
・強いうがいを避ける
・出血が止まらない場合は早めに受診
・腫れや痛みは2～3日で落ち着くのが一般的
また、抜歯後に咬合圧が変わることで、一時的に噛み合わせの違和感を感じることがあります。
これは自然な反応で、数週間で安定します。
７.まとめ
親知らずは「抜くべきか・残すべきか」を一概には言えません。
重要なのは、
・現在の生え方
・噛み合わせの状態
・将来的な咬合圧のバランス
これらをしっかり診断することです。
親知らずを放置して隣の歯を失うリスクを避けるためにも、早期の診断と治療計画が大切です。
「今は痛くないから大丈夫」と思っていても、親知らずが静かに悪影響を及ぼしていることは珍しくありません。
気になる方は、ぜひ一度当院にご来院くださいませ。
検査診断し、ご自身の親知らずがどんな状態にあるのかをお伝えいたします。
